光が僕へと歩いてくる
輝きを失うなと歩いてくる
まだそれには早すぎると
輝きが僕へと歩いてくる
祝福を携えて歩いてくる
「君を知っているんだ」と
「君も同じだろう」と
どんな言葉であなたを呼べば
この物語を止められるだろう
どんな言い訳をすれば
分厚い表紙は閉じられるだろう
いや もう分かっている
それが既に始まっていることを
僕はあなたを知っている
いつどこで逢ったのか
今は思い出せないけれど
影が僕から離れていく
眩しそうに目を細めて離れていく
「ようやくその時が来たんだ」と
沈黙が僕から離れていく
静かな音楽を聴いて離れていく
「もう気づかないふりはできない」と
「君もそうだろう」と
どんな題名をつければ
僕の胸のざわめきを宥められるだろう
なんて言い聞かせれば
震えるページを捲れるだろう
いや もう分かっている
それが既に決まっていたことを
僕はあなたを憶えてる
いつどこで逢ったのか
今は思い出せないけれど
そうさ 分かっている
それが何度でも来ることを
あなたとの遠い約束を
いつどこで交わしたのか
今は思い出せないけれど
color
金
on 2026/10/14
地下水流の音を聞いた
それは
小学校の前を歩いているときだった
街まで出てしまうと
その音は遠ざかっていった
僕は何か
大切なことを忘れてしまったのかもしれない
雑踏の協奏曲の中で
クラクションが怒声を上げる
横断歩道でカッコウが鳴く
僕は何かを
思い出そうとしているのかもしれない
すり減った靴底の
遥か地中奥深く
血管のように走る水脈よ
僕の足音が聞こえるか
僕には聞こえる
絶え間ない水の音が
揺るぎないその流れを
静かなるその決意を
僕の足元に
響かせてくれ
color
群青
on 2026/01/1
ページを捲れば波の音
指に残った砂の粒
そのうち消えると知りながら
砂に思い出を刻み
いつか終わると知りながら
波の物語を辿るうち
自分で描きたいと
思うようになったの
出来すぎたフィクションでいい
自分で描いた筋書きなら
それはノンフィクション
「物語を生きる 」ことに
どんな違いがあるというの
世界中どこにも存在しない
奇抜なフィクションでもいい
あなたが望んだ物語なら
それはノンフィクション
そこで生きるあなたを
私はそばで
見ているわ
color
菫
on 2023/07/18
春に出逢ったあなたの
冬衣装が眩しい
時の流れとは
思い出へと
色づくことなのですね
新しい風が吹けば
色はすっかり変わるでしょう
新しい風が吹けば
時が人をも連れ去るでしょう
新しい風が吹いても
あなたは私を
仰ぎ見てくれるでしょうか
背筋を伸ばし
この丘に立つ
両手を広げ
その風を待つ
color
薄青
on 2022/02/19
私の心は乾いていた
雨の音でそれに気づいた
街を弾(はじ)くピアニスト
誰かの頬を滑り降り
アスファルトの色を変える
私の心は眠っていた
目が覚めたことでそれに気づいた
窓を伝う幾筋もの
涙が世界を塗り替える
演目のないクラシック
ただ一心に降り注ぐ
あなたのようになりたかった
それが私の夢だった
雨垂れの躊躇に構いもせず
あなたは私をノックする
それはもうほんとうに
終わってしまったことなのかと
color
臙脂
on 2021/02/02
見知らぬ街の見知らぬ場所も
いつか過ごしたあの街に
どこか似ている
通りすがりの見知らぬ僕を
ちらりと見やり
見知らぬ街は暮れていく
小さなアパートの前で
ボール遊びする子供たち
夕飯の匂いのする道
茜色のメロディ
さぁもう帰る時間だよ
会いたい人が待ってる
迎えてくれるその人は
いつまでもいてくれるわけじゃない
長く果てしない休みだって
いつかは終わりがくるように
color
茜
on 2020/02/29
その河は
水の冷たさを知っている
その河は
流れの厳しさを知っている
それでも身を浸せという
その身をもって確かめるのだと
Over the river
貫く冷たさで
甦る体温がある
Over the river
この痛みを知らなければ
泳ぎだせない海がある
color 深紅
on 2009/07/16
何かが足りないと
思わなくていいように
何もない場所へ行きたい
ここから出ていきたいと
思わなくていいように
遥かな場所へ行きたい
color 青
on 2009/02/25
私が落とした一滴を
すくって飲む人がいる
それが涙でも
それが毒でも
私が捨てた一滴を
吸い上げる草がある
それが薬でも
それが毒でも
そうして今日も
いま この瞬間も
この海のどこかで
color
深紅
on 2009/01/22
ぼろぼろのときは
こころがきゅっとひきしまる
ぐちゃぐちゃのときは
こころがすっとたちあがる
もんだいがふえるほど
じんせいはずっと
しんぷるになる
color
白
on 2009/01/04
あなたを見ると切なくなるのは
私がとうに棄ててきたものを
まだ大切に 持っているから
あなたを見ると苛立つのは
私が必死に隠しているものを
堂々と首から ぶら下げているから
あなたを見ると哀しくなるのは
今このときがいつか思い出になることを
どこかで分かっているから
color
菫
on 2008/07/30
2026/10/12 この詩を音源化しました。
風も生きてるんだろう
時々 声を上げて泣くから
雨も生きてるんだろう
落ちてもまた 空へ還るから
誰かの “悲しい” は
僕の “悲しい” じゃないから
なかなか分からない
誰かの “痛い” は
僕の “痛い” じゃないから
なかなか分からない
だから時々 空を見上げる
だから時々 目を閉じる
君もひとりで
泣いたりするのかな
color
群青
on 2008/05/22
歩みを忘れ
瞼でシャッターを切る
あなたは自分がどんなに美しいか知らない
そこにいるだけでもう誰かの
光と闇に交差していることを知らない
ただの一度でも
振り向いてくれたなら
この世界は変わるのに
color
薄紅
on 2008/04/15
さくらいろのみちは
立ち止まれない
流れゆく春の川
地中深く根を下ろし
この場所で咲くひとよ
あなたを抱えて
進むことはできない
どれほどそうしたくとも
color
薄紅
on 2008/04/05
早送りの雲の流れを
見上げる僕はストップモーション
どんどんどんどん忘れていく
忘れたくないことばかり
みるみるうちに目覚めていく
さよなら告げたものばかり
頭の中の選別人は
今日も休まず作業を進める
僕の許可も得ないまま
color
鶯
on 2008/03/09
君が星に気づいたとき
はじめて光は君に届く
君が光を受け取ったとき
はじめて光は輝きを放つ
まるで
たった今 生まれたかのように
まるで
たった今 出逢ったかのように
color
金
on 2008/02/09
その人は
その人らしいやり方で
その人の望むように
その人になっていく
その人が
その人になるのをやめたら
その人であることを放棄したら
その人は何処へ行くのだろう
その人を待つあの人は
何処かで泣くだろう
その人を知ることもなく
流れる涙にも気づかないまま
ただ泣くだろう
color
銀
on 2008/01/02
新聞にも載らない小さな事件が
今日も僕を悩ませる
悩みたい 悩むことで
背負いたい 背負うことで
カチリとネジが
巻かれるから
今日も僕は生きています
これが生きるということなら
color
銀
on 2007/11/05
僕は 一体誰なのか
忘れてしまったのに
誰かが呼んでいるような気がする
僕はどんな人間だったのか
忘れてしまったのに
行かなければいけない場所が
あるような気がする
君が 一体誰なのか
忘れてしまったのに
放っておくことが
どうしてもできない
color
群青
on 2007/10/15
揺れるときは
おもいっきり揺れる
グラグラして
フラフラして
ワナワナする
そうしていれば
ちょっとやそっとじゃ
倒れない
color
黄
on 2007/09/28