凪の途上 乙女の涙



 ダイヤモンドの水面に 揺らめく遊覧船

 掌のスプーンで 太陽の落とし物をすくう


 いつからか楽しいことを

 素直に楽しめなくなっていた

 何処へ向かうのかとそればかり

 時々 目を伏せては

 眩しかったのと言い訳する


 愛しすぎないようにしていた



web拍手
color 薄紅
on 2007/07/31

 砂の散歩



 波飛沫が

 足元にかかるのを

 心なしか楽しみながら

 砂の上を歩く


 また「大好き」が打ち寄せてきて

 鼻の奥がツーンとする


 あぁ もうこんな時間

 君が家に帰る頃



web拍手
color 薄青
on 2007/07/24

 導火線

 


 薔薇との会話は薔薇とのもの

 百合との会話は百合とのもの


 そこにしか存在しない導火線に

 火がついたなら


 むやみに他言はしないよう


 外気に触れると

 消えるのです



web拍手
color 深紅
on 2007/07/14

 スイートスイートホーム

 

 生クリームを絞る母の横で

 余ったクリームをなめる

 そんな日常が好きでした

 蝉の声を聞きながら

 剥いてもらったびわを食べる

 そんな夏休みが好きでした


 思い出すのは楽しかったことばかり

 いくつかあったはずの悲しい出来事は

 ケーキと一緒に食べてしまった


 あの家は取り壊されてもうないけれど

 私の帰る場所は永遠になくならない

 目を閉じればお帰りと

 笑ってくれるあなたがいる



web拍手
color
on 2007/07/13

 ブーゲンビリアの祈り

 

 いらなくなっても

 どうか

 返さないでください


 あなたにあげたものですから

 返されても困るのです


 受け取ってくれた瞬間の

 心と心がすべてです



web拍手
color 深紅
on 2007/07/10

 ブラックコーヒー

 

 気持ちと同じくらい


 身体も疲れさせてみる



 少し走りすぎたときは


 君に手を握ってもらう



 甘すぎるデザートに


 ブラックコーヒーを



web拍手
color
on 2007/07/08

 オーケストラ

 

 燕尾服の楽団員が
 うやうやしく一礼する


 3歳の僕がシンバルを

 7歳の僕がクラリネットを

 12歳の僕がフルートを

 19歳の僕がトランペットを

 25歳の僕がヴァイオリンを


 そして今は
 コントラバスさ


 人生はまるでオーケストラ


 不器用ながらに

 深まっていくハーモニー



web拍手
color
on 2007/07/05

 助けたい

 

助けたい助けたいと
呪文のようなその言葉
繰り返したからってどうってことない
何となく安心するだけ
僕が安心するだけ

崖にしがみつく指
爪からは血が滲む
もしも離したら
誰も誰も誰も
助けられない

すぐその先の足場まで
とにかく登らなければ

この手を君に

差しだすために



web拍手 by FC2
color
on 2007/06/27

 だからもう一度

 

 形が無いのだから

 なくなることはない


 出来事は花火のようでも

 記憶の中で生きているから


 輝いていた自分を思い出せば

 それは目の前にあるようにも

 未来にあるようにだって

 思えるんだ


web拍手 by FC2
color
on 2007/06/26

 傾く空 澄んだ青

 


夕間暮れに星を待つ

薄い青に金平糖


急がなくていいんだよ

君を待つのが好きだから


謝らなくていいんだよ

君を想うのが好きだから



web拍手 by FC2
color 薄青
on 2007/06/18

 ベリーメリーゴーランド

 

たてがみの揺れない馬たちが

光の輪を描き続ける


その背に誰かを乗せたって

降ろすのはまた同じ場所


どうしても手に入れられないものは

手に入らないから欲しいのか

どうあってもほしいのか

分からずじまいだから困る

行く末すらないから困る


web拍手
color
on 2007/06/15

 じっと見る

 

 コンクリートの床を
 穴があくほど見ていた
 飽きもせず
 じっと見ていた

 そうしたら
 僕の中の太陽が
 レンズを通して集まって
 そこに小さな小さな穴を
 ほんとうにあけた

 もしやと思い
 ずっと行く手を阻んでいる壁の前に僕は立つ

 そこに小さな穴を

 あけ続けるつもりだ



web拍手 by FC2
color
on 2007/06/01

 句読点

 


 銀河のような沈黙に


 あなたが打った読点は


 「遠くへ行く」で


 そのあと打った句点は


 「一緒に行こう」だった



web拍手 by FC2
color 薄紅
on 2007/05/28

 僕らの Happy Birthday



人混みのカーテンをくぐって
夜空のビー玉 蹴散らして
甘いシャンパンのテーブルに
ケーキの僕らは向かい合う


どこかの席から聞こえてきた
"Happy Birthday"


明かりが消された数秒の
ランプになった君の目に
僕は見とれていたんだよ 
 
 
もどかしいこの距離を
吹き消す日を待っていた

 

ずっと君が好きだった



web拍手 by FC2
color 薄紅
on 2007/04/28

 雨

 

その雨の冷たさに

心が潰れてしまいそうなとき


どうか思い出して


あなたの流す涙の

その温もりを

知っている誰かが

いるってことを



web拍手 by FC2
color 群青
on 2007/04/8

 出逢い




 懐に

 吹き込む風

 舞い散る心


 ひらいた掌に

 小さな花びらが 



web拍手
color 薄紅
on 2007/04/04

 君を泣く泣くあきらめる

 

 屋根を打つよどみないリズムに

 途端に臆病になったのかい

 自転車の乗り方なんて

 忘れるはずないのに


 身に纏うものなら

 いくつか用意しておいたよ

 出すつもりのない手紙に

 切手を貼ってあるんだろう?


  そうやって また


 君は泣く泣くあきらめる

 君を泣く泣くあきらめる


 座ったままで手が届く

 専用冷蔵庫には

 よく冷えた飲み物が

 ストックしてあるんだろう?


  そうして また


 君は泣く泣くあきらめる

 君を泣く泣くあきらめる


web拍手
color
on 2007/03/1

 そして僕は何処へ行こう



 何もかもが夢のようで
 夢であればいいのにと
 夢見る頃を過ぎても なお
 君を想う時のように悲しくなる


 泣く為に声をあげ
 うたう為に泣くのなら
 いつか
 うたいたいと願ったのだろう


 紛れもない夕闇に
 押し寄せる朝の気配


 そして僕は何処へ行こう



web拍手
color
on 2007/03/09

 始まりの世界

 

 つたい落ちる水は

 流れるに任せ

 防波堤は その役割を放棄する


 出発点に辿りついてしまった


 どうしてもどうしても

 君に逢いたかったみたいだ


web拍手
color 深紅
on 2006/04/07

 タイムテーブル

 

 吹きだまりのベンチで

 思い出 思い出 蹴とばして

 何を待ってるんだろう

 風に 風に はぐれていく


 立ちつくしていた ホームの上

 ベルの音に 我に返る


 最後に見た君は 後ろ姿だったから

 夢の中でも振り向いてはくれないね

 思わず走り出した 窓の向こうに光る姿


 いつか思い出してくれる頃 僕は

 ここにはもういないかもしれない

 やっと辿りついたとき 君は

 そこにはもういないかもしれない


 旅している 会えない日々を


web拍手
color 薄青
on 2003/10/12